Registry ファイル
化学文献には化学物質がつきものである。CAplus に抄録された論文・特許中に記載された化学物質は CAS 登録番号という名札をつけられて Registry ファイルに収録される。現在 Registry には 1957 年以降の文献に対応する約 2300 万件の化学物質の名称と構造が収録されている。したがって、Registry ファイルは事実上これまでに研究されたほとんどすべての化学物質を収録しているといってよい。大学や企業で新規な化学物質を合成した場合は、かならず Registry ファイルを使って、本当にその物質が新規であるかどうかをチェックするのがあたりまえになっている。
図 10-13 は Registry ファイルに収録された化学物質の種類の割合である。最近はライフサイエンスの発展を反映して、生体物質配列 (核酸など) の割合が大幅に増えている。
図 10-13. Registry に含まれる化学物質の種類
図 10-14 に典型的な Registry ファイルのレコード例を示した。
RN 69-72-7 REGISTRY
CN Benzoic acid, 2-hydroxy- (9CI) (CA INDEX NAME)
OTHER CA INDEX NAMES:
CN Salicylic acid (6CI, 8CI)
OTHER NAMES:
CN 2-Carboxyphenol
CN 2-Hydroxybenzenecarboxylic acid
CN 2-Hydroxybenzoic acid
CN o-Carboxyphenol
CN o-Hydroxybenzoic acid
CN Phenol-2-carboxylic acid
CN Psoriacid-S-Stift
CN Retarder W
CN Rutranex
CN Salicylic acid collodion
CN Salonil
FS 3D CONCORD
DR 7681-06-3, 8052-31-1
MF C7 H6 O3
CI COM
LC STN Files: AGRICOLA, AIDSLINE, ANABSTR, APILIT, APILIT2, APIPAT,
APIPAT2, BEILSTEIN*, BIOBUSINESS, BIOSIS, BIOTECHNO, CA, CABA,
CANCERLIT, CAOLD, CAPLUS, CASREACT, CBNB, CEN, CHEMCATS, CHEMINFORMRX,
CHEMLIST, CIN, CSCHEM, CSNB, DDFU, DETHERM*, DIOGENES, DIPPR*, DRUGU,
EMBASE, GMELIN*, HODOC*, HSDB*, IFICDB, IFIPAT, IFIUDB, IPA, MEDLINE,
MRCK*, MSDS-OHS, NAPRALERT, NIOSHTIC, PDLCOM*, PIRA, PROMT, RTECS*,
SPECINFO, SYNTHLINE, TOXLINE, TOXLIT, TULSA, ULIDAT, USAN, USPATFULL,
VETU, VTB
(*File contains numerically searchable property data)
Other Sources: DSL**, EINECS**, TSCA**
(**Enter CHEMLIST File for up-to-date regulatory information)
15395 REFERENCES IN FILE CA (1967 TO DATE)
1997 REFERENCES TO NON-SPECIFIC DERIVATIVES IN FILE CA
15425 REFERENCES IN FILE CAPLUS (1967 TO DATE)
7 REFERENCES IN FILE CAOLD (PRIOR TO 1967)
図 10-15. Registry ファイルのレコード例
化学物質名 (CN) の後に (9CI, 6CI, 8CI) (CAS INDEX NAME) との表示がある. これは, この名称が Chemical Abstracts の各 Collective Index(累積索引期)の Chemical Substance Index で, 見出語として用いられている(CAS 索引名称である)という意味である. 現在使われているのは第 9 期, すなわち 9CI の名称である. その他の CN は文献中でしばしば用いられる慣用的な名称である. 医薬品やポリマーに対しては, 商品名なども CN として多数集められている. 分子式 (MF) は, Chemical Abstracts の Formula Index で用いられるもので, Hill 方式で記述されている. 化学構造の下には CA ファイルの文献数, および CAOLD ファイルに文献があるかどうかの記述がある. また, LC (Locator) という項目を見ると, この化学物質が索引されている他のファイル(たとえば CASREACT)を知ることができる. CA ファイルをはじめ, これら他のファイルでも, この CAS 登録番号を検索語として使うことによって文献を見つけることができる.
以下にさまざまな化学物質種類についてのレコード例を示した。
図 10-15. Registry ファイルの有機化合物レコード (立体化学が指定されている)
図 10-16. Registry ファイルの核酸配列レコード
図 10-17. Registry ファイルのたんぱく質配列レコード
図 10-18. Registry ファイルのポリマーレコード
図 10-19. Registry ファイルの金属錯体レコード
図 10-20. Registry ファイルの合金レコード
図 10-21. Registry ファイルのセラミックレコード